14.11.08

チベット現代アート:新しいアイデンティティーに向けて


現代アートブームにより注目を集める中国現代アート。そして北京オリンピック開催に伴い浮き彫りにされてきたチベット問題。この二つの狭間に存在しつつも今も尚充分に認識を得ていないアイデンティティーがある-1966年の文化大革命の時期に生まれ、毛沢東政府による反ダライ・ラマ教育の元で育ったチベット民族第二生の存在だ。

ゴンカー・ギェイツォはそんなチベット民族第二生の一人で、北京で現代アートを学んで以来自身の「チベット」と「中国」という二つの混在するアイデンティティーを題材に、ロンドンにて作品を作り続けている。4枚のセルフポートレイト写真から成るシリーズ作品”Life”では、文化大革命前・後・インド亡命・ロンドン移住と、移り変わりながらも重なり合う異なる文化に身を置くアーティストの多面的人物像が提示されている。



この作品は、伝統的なチベット仏教アートであるタンカや仏像を現代アートの素材として使って来た事により、自らが民族として属するはずのインドで亡命中のチベットコミュニティーからは邪道として批判を受けた、「チベット人」「中国人」のどちらでもなく同時にそのどちらでもあるというアーティスト自身のアイデンティティーの葛藤の象徴であり、その存在の認識を求める叫びであるもと言えるだろう。今、存在するのに見られていないアイデンティティー=主体性が、複数の主体により単数の存在となるという新しいアイデンティティーの生産と認識への可能性を求めているのである。


(※この画像はアーティスト本人のホームページから非コマーシャル目的でリンクしているものであり、コピーライトはアーティスト本人に属する。)


0 件のコメント: